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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
30 畜生谷の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 74,962 字 · 145 页
五十
江戸の方面に於ては、道庵牽制運動のために、安直先生と、金茶金十郎とを特派するために、オール折助連が盛んな送別会を催して、その行を壮んにすることになりました。
会場は、湯島の千本屋。
当日の正客は、安直と、金十郎。
安直先生も、今日は、いつものマアちゃんとは違うぞという気位で、羽織、袴に威儀をただして、相生町の碁所へでも出かけるような装いに、逆薤の面を振り立て、大気取りに気取って正面の席につきました。
相客の金茶金十郎は、大たぶさに浅黄服――押しも押されもせぬお国侍の粋を現わしたものです。それで、当日の幹事はプロ亀でありました。プロ亀は盛んにお太鼓を叩いて、安直の提灯を持ち、安直が武芸十八般にわたり、囲碁将棋の類まで通ぜざるところなく、当代、道庵の右に出でる者は、この安直を措いてほかには無いということを、ことごとく紹介しました。
斯様に讃められても安直は、ぎゃくらっきょうをうなだれて、あまり多くの口数を利かずに控えて、あっぱれ折助連の代表だけの貫禄のあるところを見せましたが、金十郎は、おれも負けてはいないぞという気になって、二本差を二本ながら抜いてしまい、これを振り廻して、これが左青眼だとか、右八双だとかいって、型をつかって見せましたから、会衆がみんな大喜びで、