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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
30 畜生谷の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 74,962 字 · 145 页
なんという、ナ、ナ、なんという阿呆、何という物知らずの集まりじゃ。この葬式は、わしが不承知、そ、そんな地獄の、畜生の罰あたりに、この畳一畳でも汚しちゃ済まぬ、引き出せ、叩き出せ、ほうり出して犬になと食わせてしまえ」
憤慨のあまり、吃弁が雄弁となり、猛り立った角之助が、棺箱に向って飛びつきました。
二十三
「こ、こ、こ、これ、何をしくさる」
今度は徳兵衛が、吃り且ついらって、棺に向って飛びついた角之助をおさえ、
「いまさら、お前が、それを並べんでも、わしも知っとる、皆様も御存じじゃ、この席で、それを並べ立てて何になる、生きている間は生きている間、死んだ者は死んだ者じゃ、たとえ生きている間は畜生であろうと、死んだ上は、相当のとむらいをしてやるのが礼儀じゃ、人情じゃ、それをお前は……」
「いけません、おじさん、そ、そ、そんな礼儀や、人情は、この場では通りません、とむらいをしてやるならば、してやるようにして、それからなさい、こいつは、この人でなしの亡骸は、この家から引き出さにゃなりませぬ」
「こ、これ、阿呆するな、ばかな真似をするな」
「誰が何と言っても、わしが不承知じゃ、これは追い出さにゃ置かぬ」