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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
33 不破の関の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 86,467 字 · 168 页
それでも瑞巌寺の建築を考証したり、例の田山白雲が憧れている観瀾亭の壁画なんぞを玩味したりするだけの素養があればだが、それも七兵衛には望むのが無理です。
なるほど、いい景色だなあ、たいしたものだなあ、さすがは仙台様だ――といったような、赤毛布が誰もする通り一遍の感嘆のほかには、七兵衛として、別段に名所古蹟を縦横から見直すという手段はありません。
金華山へ行って見たところで、野飼いの鹿がいる、猿がいる、それを珍しがって、やがて頂上へ登って見ると、そこの絶景に感心するよりは、更に一段の高所に登ったために、まず心頭と眼底に映り来るのは駒井の殿様の船の姿であって――それを眼の届く限り、内外の海の面に向って当りをつけて見たが無駄であった、というだけのものでありました。
多賀城の石碑へも、名所の一つだからと案内されるままに行って見ましたけれど、これが日本有数の古碑であることの考古的興味からではなく、碑面に刻まれた、
「多賀城去京一千五百里、去蝦夷界一百二十里、去常陸国界四百十二里、去下野国界二百七十四里、去靺鞨国三千里」
とあるのをおぼろげに読ませられ、
「はて、京を去る一千五百里――これは、ちっと掛値がありそうだ。