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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
33 不破の関の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 86,467 字 · 168 页
それをいま思い出したが、七兵衛には必ずしもそれを肯定するわけにはゆかない。仙台だとて、決して婦人の容姿は他国に劣ったものではないのだ。現にこの芸妓たちだからといって、江戸前と言ったって恥かしくもないのだ。といって、特別に七兵衛の眼を惹くほど綺麗だとも、イキだとも感心したわけではないのだが、今日は芸妓日だ――とでもいったように、芸妓を眼の前につきつけられることの機会が多いのと、それから、出がけに見た「塩釜じんく」の妙に威勢のよい情調が、何か七兵衛の心を捉えたと見え――
そうだ、そうだ、ここの名物として「さんさ時雨」というのがあったっけ、退屈凌ぎに名所古蹟だけは見通したが、まだ耳でもって名物を味わうことはしていない、せっかく仙台へ来たことに、「さんさ時雨」を聞いてみないことには話にならないというものだ。
七兵衛がふと、妙なところへ力瘤を入れる気持になって、一番、今夜は奮発して、あの芸妓たちを総あげにして「さんさ時雨」を唄わしてみるかな。
七兵衛はふと、こんなことを考えながら、賑やかなところを、芭蕉ヶ辻から――フラフラ、青葉城の大手の門の前に来てしまいました。