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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

33 不破の関の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 86,467 字 · 168 页

青空文庫

それで、両説が円満に妥協しました。

がんりきとしては、のろまを引っぱって歩くよりも、もうこの辺で振切って、放れ業の馬力をかけた方がよろしい。だが、そこには一応のお愛想もある。

「それから屑屋さん、関ヶ原を越すと美濃と近江の境にならあ――あそこに、それ、寝物語、車返しの里という洒落たところがある、わっしゃ一足さきに行って、寝物語へ陣取っているつもりだから、見物が済んだら、尋ねてみてくんな、またあそこいらで落合えるかも知れねえ」

こう言って、その翌朝、がんりきひとりは垂井を出立の、関も追分も乗りきって、近江路へ向ってしまいました。

四十

中仙道を近江から美濃へ越すところに、今須駅というのがある。

関ヶ原へ一里、柏原へ一里というところ、なおくわしく言えば、江戸へ百十三里十六町、京へ二十二里六丁というほどの地点に、今須駅というのがあるのです。

不破の中山とか、伊増の明神とかいって、古来相当にうたわれないところではなかったけれど、番場、醒ヶ井、柏原――不破の関屋は荒れ果てて、という王朝時代の優雅な駅路の数には、今須駅なんていうのは存在を認められなかったようなものの、でも、ここがまさしく美濃と近江との国境になるという意味のみからではなく、王朝時代から、ここに寝物語、車返しの里なんていう名所が、心ある