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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

33 不破の関の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 86,467 字 · 168 页

青空文庫

足を鈍くしたものには相違ないが、一方から言えば、このお荷物あればこそである。これさえなければ、ここにこうしてぼんやりと腰をかけている米友ではない。

「聞いてみれば、君がこの熊を手放せないのも尤もと思われる節もないではないが――今後もこういう場合を予想すれば、長い旅路の足手纏いが思いやられる。いっそ、預けて置いて出かけちゃどうだ」

「うん……」

米友は、そこで、少し考えました。事実、この熊を手放そうとまでは思っていなかったのだが、実際、足手纏いといえば足手纏いに相違ないのである。熊も大事だが、人は更に大事である。この熊があるがために、主と頼む先生に対しても忠義を励むことができず、自分の身体をさえ拘束されるようなことになってはたまらないことの理義を、米友がわきまえないほどに没常識ではない。

といって、あれまで苦しんで、人様にもお頼み申して手に入れたこの小動物に対して、単に厄介払いという意味で、見捨てたり、置き捨てたりすることは、人情が許さない。いや、米友特有の道義が許さない。

さきほどから頭の重かった一部分には、たしかに、その処分法についての悩みも手伝っていたのです。