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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

33 不破の関の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 86,467 字 · 168 页

青空文庫

ですから、天地はやはり晦暝という気持を如何ともすることはできません。弁信の方は最初から、それは滞りがありませんでしたけれども、このごろ怖れおののいていたお雪ちゃんが、今はそれをさえ忘れて、春の日に長堤を歩むような気分に、少しでも打たれていることは幸いでした。ここで、弁信に向ってお雪ちゃんが、一別以来のことを、それから宮川の堤の長いように語り出しましたが、いつもお喋りの弁信がかえって沈黙して、いちいちお雪ちゃんの言うことに耳を傾けながら、緩々として歩いて行くのであります。お雪ちゃんとしては、白骨山中のロマンスや、グロテスクのあらゆる経歴を説いて、いかにあれ以来の自分の身の上が数奇を極めたかを、弁信の頭の中に移し植えようと試むるらしいが、弁信としてはいっこう感じたようでもあり、いっこう感じないようでもあり、ただ不思議に、あれほどのお喋りが一言も加えないで、お雪ちゃんの話すだけを、長堤の長きに任せて、話させて、歩調だけを揃えているのです。こうして、長い時の間、弁信はお雪ちゃんにお喋りの株を譲って、自分は全く争うことをしなかったが――その甚だ長い時間の後に、