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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

37 恐山の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 254,021 字 · 495 页

青空文庫

と言いながら、がんりきの百が別に懐中から鬱金木綿の胴巻を取り出して、ポンとお蘭どのの前へ投げ出して見ると、自分ながら意外にズシンと来るおもみ。

五十一

だが、前の錦襴入りが瓦っかけであってみれば、今度の鬱金木綿は当然、石っころ以下でなければならぬ。

お蘭どのは、うんざりして手をつけないでいたが、がんりきが自暴半分でしごいてみると、呑んでいた五臓六腑から簡単に吐き出したのは、

「あっ! 百両百貫!」

悪党がるほどでもない、がんりきの百の野郎が頓狂声で叫び出したのは、あえてその金高に圧倒されたわけではない、その意外におどかされてしまったのでしょう。

今し、あんまり新しくもない鬱金木綿が吐き出して、畳の上へ、あたり一面に散らしたのは、封の切れない切餅もあれば、霰のような一朱二朱もあるし、小粒もあるし、全く、瓦っかけや石ころでないのみならず、即座の使用に堪え得る天下の通貨が、大小取交ぜてザクザクと降って湧いて来たからです。

といっても、要するに鬱金木綿が呑んでいたところの胃の腑の程度ですから、曾て根岸の三ツ目錐の屋敷で、裏宿の七兵衛が、鎧櫃に詰めて置いて、神尾主膳に思い切って突き破らせたあの程度とは、規模も、内容も、おのずから違うのです。