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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

37 恐山の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 254,021 字 · 495 页

青空文庫

神尾主膳も一議に及ばず、びたの勧誘に応じて出動したくらいですから、最初のほどはかなり気をよくして、ブラブラ歩き出したものですが、そのうちに、またも気色を悪くしてしまいました。

それは、あの辺には、寺と、広い武家屋敷とのほかに、百姓地が多くある。それからまた、千住から三輪街道のあたりは、かなりの百姓街道になっている。

もとより、往来するものは百姓だけではないが、あいにく、この日に限ったことではないが、近在の百姓連が多く、それも、神尾の姿を見て、多少の畏憚を以て行き違うものもあるが、どうかすると、あぶなく突き当りかけて、かえってこっちの間抜けを罵り顔に過ぎて行くものもある。

その百姓を見る時に、神尾の気色がまた悪くなりました。

神尾は生れながら、百姓というものは人間でない――ものの如く感じている。

それは、当然、階級制度の教えるところの優越性も原因することには相違ないが、それほど神尾というものが、百姓を、忌み、嫌い、呪うというのは、別にまた一つの歴史もあるのです。

それは、神尾の先祖が、百姓を搾ろうとして、かえって百姓からウンと苦しめられ、いじめられている。