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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
37 恐山の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 254,021 字 · 495 页
表面服従して、少し目をはなせば一揆を起したがるのが百姓だ――ことに近来は、一揆の無頼漢の音頭を取るものを称して「義民」だのなんのと祭り上げる輩が多いから、百姓がいよいよ増長する。そもそも、百姓をかく増長せしめた近来での大親玉は、水戸の光圀だ――
百八
神尾主膳の頭の中にまたしても、真黒い雲がうず巻いて来ました。
そもそも、この徳川の宗家にとって害物であるところのものは、水戸以上のものはない。
水戸は徳川の一家でありながら、最初から徳川の根を枯らすことばかりやっている。そうして大向うからは人気を取っている。
神尾主膳が水戸を毛嫌いをしていることは、今に始まったことではないのです。
何か機会があると、まず光圀を槍玉に挙げる。あの光圀を天下の名君の如く騒ぐ奴の気が知れない。あれは謀叛人だ、徳川にとって獅子身中の虫なのだ。あれは最初から宗家に平らかならざることがあって、池田光政あたりと通謀して、天下を乗取ろうとした腹黒い奴である。大日本史を編んだり、楠公の碑をたてたり、また、いやに農民におべっかをつかって、下に親しむように見せかけるのが水戸の家風だ。