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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
37 恐山の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 254,021 字 · 495 页
墓地の中をグルグルめぐりしているうちに、はたとその行手に立ちふさがったものがありました。雲突くばかりの大入道が一つ。これにはギョッとして、思わずタジタジとなったが、改めてよく眼を定めて見直すと、これは巨大なる石の地蔵尊の坐像であったことを知って、いささか力抜けがしました。
右の巨大なる石の地蔵尊が安坐しているその膝元には、まだ消えやらぬ香煙が盛んに立ちのぼり、供えられた線香の量が多いものだから、香火が紅々と燃え立つようになっている。
神尾は、変なところへ来たものだという感じがしました。
百十四
神尾主膳は江戸に生れたけれど、江戸を知らない。知っているところは知り過ぎるほど知っているが、知らないところは田舎者よりも知っていない。
江戸の場末といっても、自分の足のつづく限りに於て、こんな荒涼なところがあろうとは思いがけなかった。夜だから、無論その荒涼にも割引をして見る必要はあるには相違ないが、それにしてもこれはヒドイ。
だが、まだ石の大きな地蔵の像が、自分の上にのしかかった入道のように見えてならない。その荒涼たるに拘らず、大地蔵の膝元には、右の如く香煙が濛々として立ちのぼり、香が火を吐いて盛んなるところを見ると、宵の口まで人の参詣が続いていたに相違ない。