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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
37 恐山の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 254,021 字 · 495 页
「あっ!」
と、またしてもこの男にも似気なく、二の足、三の足を踏んで立ちすくんだかと見るほどに、たじろいで、やっと身を支え得たかのように突立ちました。おともの者があらば周章てて、「どうあそばされました」と介抱するところでしょうが、ともはありません。そこで踏み止まった神尾主膳は、また凝然として闇の中を見ている。
主膳の眼を注いだ方向へ線を引いて見ると、そこにまた恐るべき存在がある。地蔵の姿を悪魔の姿と見た神尾の眼には、これは正銘の悪魔だ、悪魔の戯れだ。悪魔の戯れにしても、これはあまり度が強過ぎる。
人間の生首が四つ、ずらりと宙に浮いているのです。
宙に浮くと言っても、幽霊として現われたのではない。足はないけれども、台はあるのです。三尺高いところの台があって、その上に人間の生首がズラリと並んで、驚く主膳を尻目にかけたり、白眼に見たりしてあざ笑っている。
「獄門だ!」
と主膳は我知らず叫び出すと共に、今までの疑問が発止とばかり解けました。
「わかったぞ! これは小塚ッ原だ」
そうだ、ここは俗に千住の小塚ッ原、一名を骨ヶ原という――仕置にかけて人間を殺すところなのだ。