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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
37 恐山の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 254,021 字 · 495 页
「わしは旅に慣れているから、これでよろしい、君は慣れない身でもあり、薄着で困るだろう――」
と言って、自分の合羽をまで女の薄い蒲団の上に投げかけて与えました。
女は、いろいろとお詫びしながら、先に寝入ったのです。
この小屋は、特に木地の細工をするために建てたのですが、壁がありません。がっちりとした板囲いです。
夜もすがら室内の気温を保つ意味に於て、絶えず適当の焚火を怠りませんでした。
疲れが出たものか、女はすやすやと寝入ったようです。
兵馬としては、こういう旅の宿りは今にはじまったことでないが、ただ気がかりになるのは前途のことです。およそ白山、白水谷を越えて、飛騨の国から、加賀へなり、越中へなり、出ようとする道は、道であって道でない。
こういう道を踏み破ることは、自分はあえて意としないが、この女連れだ。この女は、こうして行けばひとりでに白山へも登れるし、金沢へも出られると心得ているらしいが、さて、明日からの旅の実際の味を嘗めさせられてみると、へたばるのはわかりきっている。今晩はここで宿があったからいいが、明日の晩からの宿りは当てがないのだ。
よし、明日になったら、ひとつ案内人を求めてみよう。