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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
37 恐山の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 254,021 字 · 495 页
その次には、高橋玉蕉という美人の女学者の家へ忍び込んで見ると、そこの客となっていた田山白雲氏が、しきりに伊達家秘蔵の赤穂義士の書き物のことを話をし、盛んに見たがっている。いくら見たくても、あればっかりは拝見が叶うまいと、閨秀美人と豪傑画家とが、しきりに歎息しているのを盗み聴いて、そうしてまたしても、むらむらと敵愾心が起って来た。それほど見たいものなら、お城内のお許しがなくとも、この七兵衛が見せて上げる――
そこで、青葉城の御宝蔵へ、仁木弾正を決め込んで、その赤穂義士とやらの書き物を、ともかく九分九厘まで持ち出したのだ。
いや、間違った、間違った、あれは赤穂義士の書き物というのは、こっちの聞誤りで、実は、王羲之といって、支那で第一等の手書の書いた「孝経」という有難い文章の書き物なんだそうだ。
そいつを、田山白雲先生に見せてやりたいばっかりに、この七兵衛が仙台侯の御宝蔵から盗み出したと思召せ。
そうして、松島の月見御殿の下に、盗人のひる寝と洒落こんでいるところを見出されて、追いかけられたのが運のつき――それから、瑞巌寺というあの大寺の屋根うらの「武者隠しの間」