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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
37 恐山の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 254,021 字 · 495 页
こうなってみると、さしもの南渓子も、養軒子も、ようやく面の色が変ってきました。
「扨はそらごとにあらじ、古郷を出て三百里に及べば、かかる奇異のことにも逢ふ事ぞ、さらば宿り求めんとて、あなたこなた宿を請ひて、やうやう六十に余れる老婆と、二十四五ばかりなる男と住む家に宿りぬ」
南渓子も、養軒子も、相当の学者でありましたが、とうとう鬼の出現説に降伏して、避難の宿りを求めることになったが、そこで、
「足すすぎて、囲炉裏によりて木賃の飯をたきたきも、又彼の鬼のこと尋ぬれば、老婆恐れおののきて、何事かかき付くるやうにいふ、辺土の女、其言葉ひとしほに聞取りがたくて何事をいふとも知れず……」
土地が変り、音が変るから、老婆の恐れおののいて物語る節が、二人の旅行家には、どうしても聞き取れないけれども、この老婆が一つ家の鬼婆の変形ではなく、善良にして質朴なる土民の老婆であることは確実ですから、旅行家の方で念をおしてたずねてみました。
「然らば、その鬼はいかなる形ぞ、額に角を立て、腰に虎の皮のふんどしせずやといへば……」
百六十
そこで二人の学者は、まず鬼の風采、衣裳の特徴、角とふんどしのことから問いただしてみると、老婆に代って、その傍らの若い男が首を振って答えました、