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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
37 恐山の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 254,021 字 · 495 页
「あっ!」
とひっくりかえると共に、急勾配になっていた草原を、俵を転がすようにころころと、とめどもなく転がり落ちて行くのです。
しかし、ここは落ちたところでカヤトのスロープで、千仭の谷へ転がるという危険はないから、笑って見ている。
坂本竜馬は、転がり落ちて行くよたとんの姿を、憫笑しながら言いました、
「とんだ剽軽者である、変な出しゃばりおやじもあったものだ、近藤勇の同郷人だと口走っていたようだが、世間には、自分の同郷人だと見ると、無暗に賞め立て担ぎ上げて騒ぐ奴と、それから、今のおやじのように、ムキになってコキ卸して得意がる奴がある。たとえば薩摩というところは、よく一致して同郷人を担ぎ上げたがるところで、あすこへ生れると、さほどの人物でない奴でも、郷党が寄ってたかって人間以上に箔をつける、あの一致する気風は薩摩の長所だ。それと違って、同郷だというと、むやみに啀み合い、ケチをつけたがる風習の土地柄がある、たとえば、水戸の如きは、あれだけの家格と人物を持ちながら、到底一致することができない、奸党だ、正義派だ、結城だ、藤田だと、始終血で血を洗っている、薩摩あたりに比べると絶大な損だ。