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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

37 恐山の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 254,021 字 · 495 页

青空文庫

そこで、よたとんは、当然、自分の縄張うちに来たので、頷いて胸思案を試みた後、やや反り身になって、

「さよう、今年すなわち慶応の三年は皇紀二千五百二十年じゃによって、今より千年の昔は――さよう――延喜天暦の頃になり申すかな」

「ははあ」

と金茶金十郎が感心して、

「して、それに八年を足し申すと……」

取ってもつかぬ愚問を提出した時に、お角親方の大一座が、松の根方で、ひときわ陽気に囃し立て、うたい立てました――

志賀、からさきの

一つ松

まつは憂いもの、つらいもの

憂いもつらいも

ここはなぎさの

一つ松

ヨイトコ、サッサノ

百七十

お角親方一座の興が、全く酣わなる時分に、湖水の一方から、矢のようにこの岸へ漕ぎ寄せて来た二はいの舟がありました。

ひたひたと漕ぎつけて来て、桟橋の際へ素気なく乗りつけると共に、乗組の者が、バラバラと岸へ飛び移ったことの体が尋常ではありません。

その、岸へ飛びついて来た人体を見ると、野侍のようなのがあり、安直な長脇差風のもあれば、三下のぶしょく渡世もあり、相撲あがりもあり、三ぴんもあり、折助風なのもある。これらがいずれも血眼になって、岸に飛びうつって来ると、早くもお角親分の大陽気な一座をめがけて、突進というほどではないが、実は突進も乱入も致しかねまじき気合を含んで、ぞろぞろと取りつめて