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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
37 恐山の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 254,021 字 · 495 页
、あの辺のお安いところならば、このお角さんの一睨みでたくさんだ――
とお角さんは、充分にこいつらを見くびりながら、山王様の方へ進んで行きました。
お角さんの見くびった通り、こいつらは、いやがらせ以上のことを為し得る奴等ではないかも知れないが、そのいやがらせも、こっちの虫のいどころによっては、事が起らないとも限らない。
こうして、お角さんは、送り狼だか送りよた者だかわからない奴等に送られて、山王を目指して行きましたが、一行のうちの誰もが、お角さんのそんな腹の中には気がつかず、相変らず遊山気取りでブラリブラリと進んで行きました。
ところが、まもなく、一行のすべてのこのいい気分が、ぶち壊されて、ふるいおののくような事件が出現したのは是非もないことです。それは、うしろから、例のよた者が、急にふるい立って殺到して来たわけではない。松並木になって、左右が畷に続いている札場のところまで来て、
「ああ、怖――」
と、殿として後ろにやや離れていたお角さんを別にして、一行の者が往手をのぞんで立ちすくんでしまいました。
見れば、その松並木の松の根方や往来へ半ばかかったり、畷道へのめったり、甚しいのは、往還の真中へ重なり合った、人間の死骸の山です。