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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

37 恐山の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 254,021 字 · 495 页

青空文庫

そこで、もう袖でも隠せなくなって、切れるの切れないの、死ぬの生きるの、やいのやいのという沙汰になると、さすが後年の新撰組の豪傑も、生ける空とてはなかった。それを口を利いてやっと捌きをつけてやったのが、男の方では佐藤という土地の幅利、女の方ではここに現われた女興行師のお角さん。その弱味を抑えられているから、さすがの豪傑もいささかテレている。こういうたあいない話をしながら二人は、湖面から来るなごやかな風に面を吹かせて、大津の方面に向って急がせて行く。なお残された新撰組の隊士は、いったん山王下に留っていたが、徐々に叡山へ向ってのぼりはじめました。

百八十一

一方、山王様へ参詣の道すがら、お角は狐につままれたような感じがしている。

新撰組というから、鬼を膾で食うような豪傑ばかり集まっているのかと思っていると、豈図らんやその大将が、歳どんであろうとは……

そもそも歳どんなるものは、江戸近在の田舎から出て来た小僧だとは聞いていたが、その身許なんぞは、今日が今日まで少しも聞いてはいなかった。

わたしが知ってからの歳どんは、上野松坂屋へ丁稚奉公をした生意気でおしゃらくな歳どんからはじまる。