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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
37 恐山の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 254,021 字 · 495 页
「いや、なかなか、そうでねえそうだよ、第一、このお寺の庭というやつが曲者で、これが昔、我々の先輩として尊敬する曾呂利新左衛門の設計にかかるということだ」
「なるほど――それは、その言い伝えの通りでござる」
「それ、ごらん――曾呂利が腕を見せた庭とあれば、それだけでもけっこう見物だね。それから、もう一つは、大阪の城内から将来した最も由緒ある豊臣太閤秀吉の坐像がおありだそうだ」
「いや、それはどうも……」
「それと、もう一つ、淀君から、秀頼をよろしく頼むとさる人に宛てて細々と書いた自筆の消息状、並びに、豊臣秀頼八歳の時の直筆がお有りだそうだ、後学のために、ぜひ、それらは拝見いたしておきたいと、わざわざ道をまげておたずね致したものでござる、何卒、折入ってひとつ、拝見の儀、お願い申したき次第でござります」
と道庵が、至極テイネイに頭を下げたものです。
留守をあずかる浪人は、それを聞いていささか迷惑げに、
「曾呂利の庭だけは申し伝えの通り、いまだに面影が残っておりまする故、ごらん下さる分にはいっこうさしつかえござらぬが、その豊太閤由緒の何々と申す儀は……左様な寺宝があるとも承り、またないとも承っておりまして、何とも御返事が致しかねるが、いずれにせよ、当今は訪れる人もなきこの荒れ寺を、よくぞお心にかけて、江戸よりわざわざお立寄り