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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
37 恐山の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 254,021 字 · 495 页
「田山先生、あんまり手荒いことはしないで頂戴ね」
「うむ、萌さん――君もいったい心がけがよくない」
と白雲は、押隔たる娘の面を浅ましげにながめて、たしなめると、
「マドロスさん、そんなに悪い人じゃありません、手荒いことしないでね」
「君を掠奪して、こんなところへ連れ込んだ不埒千万な奴じゃないか」
「いいえ、マドロスさんばかりが悪いんじゃないのよ」
「無論、君にも責任があるよ、何というだらしないこった、歯痒くってたまらない」
その時、号泣していたマドロスが、急に哀願の体で、
「田山先生、ワタクシ、悪イトコロアヤマルデス、縄、解イテ下サイ」
それを耳にも入れず田山白雲は、柳田平治をさし招いて言いました、
「柳田君――ではこれからを君に引渡すから頼みますよ」
「承知しました」
「マドロス」
と、白雲が改めてマドロスを呼びかけると、
「ハイ」
神妙な返答です。
「貴様を、これからこの人に託して、月ノ浦の駒井氏の元船まで送り届けるのだ、じたばたしないでおとなしく引かれて行けよ」
「御免、御免」
マドロスは、また哀号の声を高くして、
「御免、船ヘ戻ルコト、オ許シ下サイ、船ヘ戻レバ殺サレルデス」