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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

41 椰子林の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,374 字 · 345 页

青空文庫

でございますから、お面つきや、御縹緻のほどは少しもわからないのでございます――なに、しょっちゅう頭巾のかぶり通し――はてな、兵馬が気ぜわしいうちにも頭を捻って、考えさせられたのは、誰と思い当ったわけではなく、その点に、右の女性の性格の重点があると感じたのでしょう。

では、ひとつ、わしは少し心当りのことがあるから、明朝早速、胆吹へ上って、その女賊の大将にお目にかかって、お聞き申してみましょう。

それはおよしあそばせ、ちょっと見ては、左様なおしとやかなお方でございますけれども、その悪党は底が知れぬ。気に入らぬものはみんな縊り殺して、穴蔵の底に投げ落してしまうのだそうでございます。現に、幾人かの人の屍が、胆吹の奥の山の洞穴の底に埋もれて、夜、青火が燃えさかるという話。構えてお近づきにならぬがよろしうござんす――何をばかな、今の世にそんなばかばかしいことがあるものか、ぜひ、ひとつ、明日はその胆吹の御殿をたずねてみにゃならん。

お言葉ではございますが、よし、鬼などのことは嘘と致しまして、これから胆吹へおいでのことはお見合せになった方がよろしかろうと存じます。