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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

41 椰子林の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,374 字 · 345 页

青空文庫

「お角さんかね」

「旅の者でござりまするが」

「旅の衆!」

と言って、不審がって小窓から面を現わしたのは、不破の関守氏であります。それを見て兵馬が、

「御当家の御飼養と覚しき見事な畜犬が、路傍に去来しておりましたから、引連れて参りましたが」

「それは、それは」

と言って、不破の関守氏に諒解があって、急ぎ庭下駄を突っかけて、カラリコロリとやって来る音が聞えます。

四十八

その翌日、駒井甚三郎は、鉄砲を肩にして、従者とては船乗の清八ひとりだけを伴い、島めぐりのためと言って、早朝から出かけました。田山白雲も、毎日、島めぐりのために出発しますけれども、これは島めぐりというよりも、写景を目的として、任意に出て任意に帰るのです。

駒井のは、この島の地理学的研究のための実地踏査の第一歩です。

広くもあらぬ島でもあるし、気候風土ともに、危険のおそれなきことを確認しての上の出立ですから、特にそれらの準備というようなものも必要なしと見て、日一ぱいに行って戻れるだけに、充分のゆとりを見て、一人で行き一人で帰る、いわば散歩気分の外出に過ぎません。

開墾地の留守の支配は、七兵衛入道ひとりを以て足れりとします。