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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

41 椰子林の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,374 字 · 345 页

青空文庫

献上隊の一行が、いずれも銭拾いの手を休めて、いま過ぎ去った二人の武士の後ろ影を、つくづくとながめ、

「薩摩だな」

「うむ、あれは誰だか知ってるか」

「どうも、前のは薩摩の大久保市蔵らしいぜ」

「拙者も、そう思う、そうして、あとは長州の品川弥二ではないか」

「そうだ、たしかにそれに違いないぞ、薩長の注意人物が相携えて、岩倉三位訪問と出かけるからには、一嵐ありそうだ」

「だなあ、一番、様子を見てやろうじゃないか」

「見届けて土産物にしようかなア」

こう二人が言い合わせて、また腰をかがめて銭拾いの続演。

これと引違いに、いま問題になった馬上の二人の武士。

やっぱり、めざすところは岩倉三位邸の門でありました。

そうして玄関にかかって言うことには、

「薩州の大久保でございます、岩倉三位は御在邸でございますか」

その時に、玄関は開かず、中庭の枝折が内からあいて、

「大久保君、よく来てくれた、まあこっちからお入り――」

と面を現わしたのは、さきつ頃、がんりきの百が垣根越しに一眼見て、危なくこの威光にカッ飛ばされようとした御本人――即ち岩倉三位その人でありましょう。綾の小袖の着流しで、手に手頃な鍬を持って現われたのは引続いての庭いじり、いまだに鍬が離せないものと見えます。