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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
41 椰子林の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,374 字 · 345 页
「今日は品川君を連れて参りました」
「あ、それは、それは」
と岩倉三位は改めて、ジロリと同行の品川弥二郎を見ました。この空気によって見ると、岩倉と大久保の間は入魂になっているが、品川は初対面であるらしい。特に大久保が今日、品川を帯同して、岩倉に紹介がてら推参したものと思われます。
岩倉三位は鍬を杖にしたままで、まだ庭先に立っている。
五十六
「天下の風雲をよそにして、菊を南山に採るという趣があります、お羨ましい境涯です」
と大久保が、岩倉三位の手ずから丹精の小庭と、その手にせる鍬を見て、こう言ってお世辞を申しますと、岩倉が、
「必ずしも左様な風流沙汰ではないよ、この鍬で、今その風雲のとばしりを少しばかり鎮めたところだ、あの小山を見給え」
と指しますから、庭の一隅を二人が見ると、そこにまだ土の香の新しい土饅頭が一つ築かれてあるのであります。
「何ぞお囲いになりましたか」
「たった今、ここの玄関へ怪しげな壮士体の者共が押しかけて、わしに献上と言って、玄関へ何か置きはなして行った、取調べてみると、人間の片腕が一本、まだ生々しいのが、三宝に載せて置いてある、不潔千万だから、今、それをここのところへ埋めたばっかりだ」