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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
41 椰子林の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,374 字 · 345 页
この時分、もはや密談は終って、おのおの好むところの書画骨董の余談にうつり、その潮時に出入りの骨董屋が来たというので、無雑作にお目通りを許されたものとも見える。まもなく、三太夫に導かれてこの席へ姿を現わした山科の骨董屋なるものを見ると、これが意外にも光仙林の不破の関守氏であろうとは……
不破の関守氏というのは、前身が相当の曲者であってみると、さては、お銀様を説き立てて、名画名蹟の蒐集ぐらいでは芝居が仕足りない。洛北岩倉村へ集まる、この辺の役者を板にかけて、脚本の製作をたくらんでいるとすれば、こいつも大伴の黒主に近いが、果して、さほどの大望を抱いて来たのか、或いは、山科の骨董商になりきって、このお邸のお出入り商人たるを以て甘んじて御用伺いに来たものか、その辺はわからない。
わからないと言えば、がんりきのようなのぼせ者を煽てて、この岩倉村に東西きっての大バクチがあるから行ってみろと、貸元までつとめて、がんちゃんが勢い込んでかけつけてみはみたが、事は以上示すところの如く、馬鹿をみたようなものであった。自身、ここまで出向いて来るくらいなら、何を苦しんで、がんりきをああまでかついだのか、はなはだ解せないことです。