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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

41 椰子林の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,374 字 · 345 页

青空文庫

「いや、これでよろしい、寸分相違がない、見事な出来でござります」

と大久保が保証すると、品川も頷く。三位も満足の体。その時に大久保が改めて、

「では商人、この方式によってしかるべく頼むぞ、恐れ多き事ゆえに他言は固く無用、万一、外間に洩るる時は、その方の命はなきものと覚悟せよ。この絵図面もその方を信じて手渡す、これによって、日月章の錦旗四旒、菊花章の紅白の旗おのおの十旒を製して薩州屋敷に納めるよう――世間へは、薩州家の重役が国への土産の女帯地を求めるのだと申して置け」

「委細、心得ました、必ずともに御信用に反きませぬ、万一、手ぬかりを生じましたその節は、この痩首はなきものと、疾うに覚悟をきめておりまする」

「町人にしては惜しい度胸、昔の天野屋に優るとも劣らず、では、しかと申しつけたぞ」

「有難き仕合せにござりまする」

ここで、不破の関守氏はまたも頓首膝行の形で、三傑の御前を辞して、次の間に辷り出て、三太夫にまで鞠躬如としてまかりさがってしまいました。

五十八

不破氏が、ここまで食い入って、ここまで信用を掴み得たという手腕のほどは甚だ驚歎すべきことでありますが、ここに於て、東西に二つの錦旗の問題が隠見して来たことは、この小説の作意ではありません。