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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
41 椰子林の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,374 字 · 345 页
、大久保さんにも似合わないことだ、お公卿さんに免じてのお追従だろう、本来、お公卿さんなぞに、そんなにエライ人物が有りようはずはない、位が高い、伝統が物を言うから、人があんまり持ち上げ過ぎる、というよりは、天下の志士とかなんとか威張ってみても、所詮地下の軽輩の眼には位負けがする、そうでなければ、仕事の都合上、持ち上げて置いて利用する程度のものにしか考えられなかった、岩倉とて何ほどのことがあろうと、あの瞬間に、わしは一種の軽蔑の念をさえ持ちましたがな、あのそれ、庭に手ずから築いた土饅頭を指して、今ここへ人間の生腕を埋めたところだ、誰かいたずら者めが、賀川肇の腕を切って来て、三宝にのせて玄関へ置きばなしにして行ったから、それを今ここへ埋めたところだと、平然として談っているあの度胸には、実際驚きましたなあ、当時、豪傑といわれる武家の大名のうちにも、あれだけの度胸を持った奴はありますまい、刺客を前にしてあの底の知れない図々しさを持った者は、血の雨をくぐって来た浪士のうちにも、あんまり多くはない、お公卿さんにも、あれだけの度胸があるものかと、僕はまずそれで参ったよ。