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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

41 椰子林の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,374 字 · 345 页

青空文庫

人物は多いが、岩倉三位に比べると同日の談ではない、江戸に依存せずとも、薩長を操縦せずとも、立派に大業を成せる人だと僕は思いました。大久保さん、おたがいにしっかりしないと、薩摩も、長州も、岩倉三位に食われてしまいますぜ」

品川弥二郎は、はじめて会った岩倉三位に就いての印象を、大久保市蔵に向って右のように物語りつつ、やがて京の町に入り、薩州邸へと帰着するかと思うと、上京寺町通り裏、石薬師門外のあたりで二人の姿が消えました。これより先、がんりきの百蔵と、宇治山田の米友も、件の如き首っ枷の芸当を以て京の町外れまで一散に走りましたが、そこで、米友は、がんりきの肩から下り、がんりきは脚絆の紐を結び直したけれども、二人の口頭には別になんらの人物論も起りません。

がんりきの百は、あんまりばかばかしいから、ドコぞで一杯飲んで行くと言って、米友と立別れ、米友は蹴上、日岡と来た通りの道を辿って山科へ帰りました。

五十九

その夜のこと、昼さえも静かな岩倉谷の夜もいたく更け渡る頃、たった一人の白衣の行者が、覆面をして両刀を落し差し、杖を携えて、飄々浪々としてこの岩倉谷に入り込みました。