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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

41 椰子林の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,374 字 · 345 页

青空文庫

。

その一台の馬車を中心にして、これらの群集が、押し合い、へし合い、なぐり合いをしているのだということがわかりました。つまり我勝ちにあの馬車に乗ろうとして、押し合い、へし合い、もみ立てているのだということがわかりました。

馬車といっても、バスといっても、その頃はまだ珍しいものでありました。その当時に於ては、まだ、バスというものも、馬車というものもなかったから、神尾主膳には、バスも馬車もわからない。なんでみんなが、あれを取りまいてこんなに騒いでいるのか、それがわからない。ことに、さいぜん食傷新道で見た行列は、おさんどんや、山猿連のようだが、これは見ていると、しかるべき身上の奴が多い。町人では大尽株、一党の頭株といったような連中までが、あの通り、血眼になって取っつき引っついている、見られた図ではない。

それをまた、世間知りの渡り仲間が説明してくれました。

つまり、このごろ「馬車」というものを流行らせた奴がある、やっぱり毛唐かぶれで、あっちから見て来たやつの猿真似なんでがんしょうが、ごらんの通り、大八車の上へ四本柱を押立て、ズックで屋根を仕かけ、中へ桟敷を立て込んで、早く言ってみればそれ、船に屋形船というのがありまさあ、あの伝を馬で行っただけのもので、屋形車といったもんでがんしょう、それを馬で引かせてトット、