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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
34 白雲の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,838 字 · 204 页
要領を得ないのではない、得させないのは、言語の不通がさせるのだ。
「おらあ、おくにやあ、くちいたてばっても、あんな折助言葉、うざにはくわなあ」
さても鴃舌の音、一時ムカとしてもみましたけれど、いやいや、ところかわれば品もかわるのだ、かえって、先方は、こっちの江戸弁――をさげすんで、嘲っているようでもある。今も子供が言った一語、「折助言葉――」だけが、耳ざわりに残っている。身不肖にして小藩に人となり、田舎まわりの乞食絵かきのようなザマはしているが、未だ曾て折助風俗に落ちた覚えはないのに、陸奥の涯へ来て、しかも子供の口から、こういったあざけりをあてつけられようとは、あさましい。
白雲が舌を捲いて、名取川の岸まで来ると、そこで、一ぜん飯屋に身を投じました。前の川で取った川魚を炙って、そのまま食膳に供えて客を待つ。
白雲は、ここで亭主と女房とを相手に、わざと悠々と構えて、四方山の話をもちかけたのは、一つは、これから仙台郷へ入って、なるべく郷に従わんとする用意としての、奥州語の会話の練習を兼ねんがためでありました。
ここで、気を練らして白雲が、夫婦を相手の会話の中から判断して、幾つかの仙台語のうちの単語を修得し、これを画帖の端へ、ちょいちょいと書きつけたものです。