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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
34 白雲の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,838 字 · 204 页
急にその事を思いついた白雲は、番頭を呼んで、その由を申し入れてみると、番頭の言うには、確かにお預り申してあります――土蔵へ蔵いこんでございますから、只今、取り出してごらんに入れます。そうか――それはよかった。白雲はここで思いがけなく、房州で別れたわが子にめぐり会われるような喜びを感じました。
土蔵から、その財産を取り出して来てくれる間のこと、田山白雲は、地図を按じて、追手搦手の二つの戦略を考えはじめました。
追手というのは、七兵衛方面のことで、搦手というのは、ウスノロと兵部の娘の馳落方面のことをいう。この二つを、これからどう目当てをつけていいか、ここ石巻を策源地として手段方法を案じはじめたのです。
二十五
つらつら地図を按ずると、どうもなんとなく、第六感的に、北東部が気になってならない。ここから北東部といえば、北上川の支流にあたる追波、雄勝方面と、それから自分がいま経て来た万石浦から、女川湾をいうのです。
七兵衛の逃げた方面というのは、全然雲を掴むようなものだが、絶体絶命の場合には、方角を選ぶ余裕は無いにきまっているが、しかし、彼の本心の磁石は、必ずや月ノ浦の無名丸に向っているに相違ない。