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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

34 白雲の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,838 字 · 204 页

青空文庫

だから疑えば毛利元就のあの三人の子供に弓の矢を折らせたという物語は、かえってこの物語から出たつくり話ではないかと疑うのが当然なのである。しかし、もう少し同情した考えようによると、日本でこの本がはじめて翻訳されたのは文禄三年ということだが、それ以前に日本へ来た宣教師や外人によって、なんらかたとえ話となって日本人の口に膾炙していたかも知れない、それを元就が聞き知っていて、自分の最期の遺言に利用したものと見られないこともあるまい」

「そういう順序でございましょうか。なんにしても大へん結構なお話で、偉い父親ならば、きっと利用しそうなお話でございます」

それから、駒井は、そう解釈するのが親切であって、たとえ話などというものは、本にまとまって出るずっと以前に、必ず口頭で伝えられてなければならないはずのもの、現にこの伊蘇保物語などにしてからが、二千年前、ギリシャという国で、イソホという人が著したということになっているけれども、事実はそれよりも千年も前に、同様の話が行われていたということ、イソホはそれらを上手に集め成したのだろう――日本でも、文禄時代に肥前の天草で翻訳される以前、いずれの国人にも最も耳あたりのよいこの物語が、言い伝えられ、語り伝えられていないというはずはなく、まして、海外交通の最も便宜の多かった山陽道方面