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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
34 白雲の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,838 字 · 204 页
「そういう人がいるなら、早速会ってみたい、どこにいます」
「お船の船頭部屋に泊り込んで、毎日、修繕仕事を手伝わせていただいております」
「今晩もいますか」
「はい、宵のうちは乳母さんのお部屋へ、皆さんとよくお話しに出かけます」
「では、直ぐにここへ呼んでもらえまいか」
「今晩お会い下さいますか」
「早い方がよい、今すぐにここへ呼んで来て下さい、ここでひとつ、会いましょう」
「では行ってまいります」
お松があたふたと出て行ったその後で、駒井甚三郎は、なんだか胸が躍るように思いました。が、また思い返してみると、それはあんまりお誂向き過ぎる、そういう思いがけない人間が、この際、ひょっこりとここへ現われるなどは夢のようなものだ。もとより本当のマドロス修業をした人間ではない、海へ出た魚師かなにかが災難で漂流して、世界中を吹き廻されて来たというものだろうが、なんにしても遠洋航海の実地経験さえ持ち合わせている人ならば充分だ、早くその人を見てみたい、そうしたならば明日からでもマドロスの補欠として雇い、大工から引抜いて、天晴れ一方の仕事を任せてみたい。
こう気構えしていると、やがてお松が手を曳いて、当人をここへ連れて来ました。