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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

34 白雲の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,838 字 · 204 页

青空文庫

殿中、上を下への騒動の中に、通り合わせた伊達吉村侯は、細川侯を介抱し、

「細川越中守、ただいま卒中にて倒る、伊達陸奥守お預り申す」

と言って、血の垂れたところへは、全部小判を敷きつめて、御自分のお乗物に、越中守の御死体とお相乗りになって下城なされました。

桜田御門の検閲は厳しいそうでございますが、その時、吉村侯のお乗物は、東照宮御由緒附きの胴白のお乗物――それに太閤様以来、伊達家だけにお許しの活火縄で、粛々と行列を練ってお通りになったので、どうすることもできず――御面会のために群がる者へは、

「越中守殿は卒中にて倒れたが、只今、粥一椀を召上られたから心配御無用、御療養中、面会は一切おことわり――」

ということで、とりあえず細川家へ急をお告げになりました。

細川家では、その翌日、「細川越中守宗孝、薬用叶わず、卒中にて卒去」ということの喪を発しましたが、暗殺は公然の秘密に致しましても、伊達家の証明如何ともし難く、病気ということで公儀の取りつくろいも一切御無事に済みました。

これはこれ、有徳院様お代替りの延享四年十月十五日のことでございました。

御承知の通り、国主大名が殿中に於て非業の死を遂げた場合には、家名断絶は柳営の規則でございますから、伊達公のお通りがかりが無ければ、細川家は当然断絶すべき場合でございました。