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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
34 白雲の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,838 字 · 204 页
「『いかで都へ』と便りを求めしもことわりなり。なかにもこの関は三関の一にして、風騒の人、心をとどむ。秋風を耳に残し、紅葉を俤にして、青葉の梢なほあはれ也。卯の花の白妙に、茨の花の咲きそひて、雪にもこゆる心地ぞする。古人冠を正し衣装を改めしことなど、清輔の筆にもとどめおかれしとぞ」
古人の名文は、今人の心を貫くが故に名文なのだ。名文というものは人の言い得ざることを言うが故に名文なのではない、万人言わんとして言い得ざることを、すらすらと言い得るから名文なのだ。
こうして、郡山、二本松、あさかの山――黒塚の岩屋をそれぞれに一見して、福島についたのは、その翌々日のことでした。
福島の家老に杉妻栄翁という知人があって、これをたずねてみると、この人は藩の政治になかなか勢力ある一人ではあったが、またよく一芸一能を愛することを知るの人でしたから、白雲のために、その家がよい足がかりとなったのみならず、かなりの仕事を与えられたのみならず、狩野永徳を見んがために松島に行くという白雲の意気の盛んなるに感心し、
「なるほど――観瀾亭の襖絵のことは、わしも聞いている、それが山楽、永徳であるか、そこまではわしは知らん、しかしながら、たしかに桃山の昔をしのぶ豪華のもので、他に比すべきものはない。