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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

34 白雲の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,838 字 · 204 页

青空文庫

寝苦しさを妨ぐべき何物もないのに、寝つかれない。

なるほど静かなものだなあ、まるで四方千里、人烟を絶した山谷の中に置き放されたような心持がする。静寂といったところで海は直ぐそこだし、町も、城下も、そんなに遠いところではないが、洞然として森閑なる思いが身に迫るのは、寺が大きいからだ。

駒井は寝ながら、行燈の光で、高い天井と、がっしりした木口をながめて、今更のように瑞巌寺の規模というものを考えさせられざるを得ませんでした。

本来、駒井甚三郎は、科学工芸――ことに造船だの、新式兵器だのということに就いては、深甚なる研究も興味も持ってはいるが、土木建築となると、さほどに興味がないし、絵画彫刻となると、なお一層でした。

ところが、こうして見ると、この寺を建てた政宗の規模を思い起さないわけにはゆきません。

瑞巌寺は、寺ではなくして城だ――表は寺の構えにしてあるが、これを建てた最初の政宗の規模は城である。陽寺陰城とでもいうのかな、昔の大名が城としては持てないのを、寺として置いて、他日に備えるという用意は、この瑞巌寺に限ったことではない――加藤清正なんぞもその著しいもの、大名のうちの殊に大きなやつは、みんなそのくらいの用意を持っていた。