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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

34 白雲の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,838 字 · 204 页

青空文庫

、一時、初対面の誰人をも圧迫せずにはおかないものです。

「呆れ返ったものだ」

白雲といえども、思わず苦笑をとどめることができませんでした。

いったい、これは何のおまじないに原因しているのだ――道祖神というと、こんなものを押立てたがる故事因縁がよくわからない。道祖神そのものは、猿田彦命だということだが、猿田彦命ならば、それは神代史に儼存の人であるに相違ない。それがこの露骨な男根と何の関係があるのか、これは柳田国男氏にでも聞かなければよくわからないものだと、白雲が途方にくれました。

呆れ返った末に、とどめ難い苦笑いをもって、白雲は、図抜けた道祖神の表象のまわりをながめているうちに、その太く逞しいかり首のあたりに結びつけられた、一つの絵馬を認めないわけにはいきませんでした。本来ならば、このブラさがった絵馬そのものが、まず人の目につき易いのですが、石体そのものが、あんまり奇抜過ぎるものですから、絵馬は第二第三の印象になってしまいましたが、よく見ると、つい、たったいまかけて行ったかと見えるほど新しいもので、しかもその絵がまた奇抜であることを認めずにはおられません。