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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
34 白雲の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,838 字 · 204 页
しかし、気分に相当の差異こそあれ、二人ともにその職業とするところに一心であることは同じようなものですから、あえてこの寂のついた庭の面を荒すというようなことはありませんでしたが、不意に、二つの珍客が舞い込んで攪乱しました。
「あ、いたいた、田山先生がいたよ」
「茂公か――」
田山白雲が、思わず写生の筆をとどめて見入ると、まごうべくもない清澄の茂太郎と、それから、もう一つの珍客はムク犬です。
ムクは、この著作に於てこそ、かなり知名にして有要な役目をつとめつつある犬ですけれども、田山白雲とは未だ相識の間でもなく、まして入魂の間柄でもありませんでした。
白雲が船へおとずれた時は、ムクはひそかに睡眠の不足を船底のいずれかで補っていたかと見える。白雲がこちらへ来るまで誰も引合わせなかったものですから、この時、これは素敵な大物を茂公が連れこんで来たものだわい――この小僧は、山に入って猛獣毒蛇とも親しむだけの天才を持った小僧だから、もうここへ来ると、その辺のイカモノと馴染が出来てしまったのだな。
「先生、七兵衛おやじはいないの?」
「うむ――」
この時、白雲はあたりを見廻し、