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だいぼさつとうげ
大菩薩峠1
中里 介山
中里介山『大菩薩峠1』。同一底本的分册已合并为一书。收入:大菩薩峠、大菩薩峠、大菩薩峠、大菩薩峠。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,314 字 · 398 页
かの槍を持たせて講武所から聖堂の方へ別れた乗物は、疑いもなく高橋伊勢守で、高橋の邸は牛込神楽坂で、邸内には名代の大楠があって俗に楠のお屋敷という、それへ帰るものに相違ないのです。案の如く高橋をイナすことができて、めざす清川八郎ただ一人。新徴組の壮士は刀の鯉口を切って駕籠をめがけて一時に飛びかかろうとするのを、土方は、
「叱!」
と制する。大将の許しがないので、腕は鳴り刀は鞘を走ろうとするのを抑えて、土方を先に十余人が乗物のあとをついて、五軒町、末広町と過ぎて広小路へかかろうとするが、土方はまだ斬れとも蒐れとも言いません。
こんなことを知ろうはずのない清川の乗物は、ずっと上野の山下へ入って行きます。
「町家を避けて山へ追い込み、そこで充分に仕遂げるつもりだな」
こう思って各々は同じく山下へ入り込んで行きましたが、究竟と思う木蔭山蔭をも無事に通り抜けさして、ついに鶯谷、新坂の下まで乗物を送って来てしまいました。
何のことだ、ここを過ぐれば山は尽きる。
三十
新坂から鶯谷へかかる所、後ろはものすごい上野の森、離れては根岸から浅草へわたり、寺院や武家屋敷の屋根が所まばらに見えるくらいのものです。