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だいぼさつとうげ
大菩薩峠1
中里 介山
中里介山『大菩薩峠1』。同一底本的分册已合并为一书。收入:大菩薩峠、大菩薩峠、大菩薩峠、大菩薩峠。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,314 字 · 398 页
「文之丞の細君が何故に妹と名乗って当家の若先生を訪ねて来たか、それが解せぬ」
「あ、若先生のお帰り」
無駄口がパタリとやんで、見れば門をサッサッと歩み入る人は、思いきや、一昨日、大菩薩の上で巡礼を斬った武士――しかも、なりもふりもその時のままで。
五
竜之助の前には、宇津木の妹という、島田に振袖を着て、緋縮緬の間着、鶸色繻子の帯、引締まった着こなしで、年は十八九の、やや才気ばしった美人が、しおらしげに坐っています。
「お浜どのとやら、御用の筋は?」
竜之助の問いかけたのを待って、
「今日、兄を差置き折入ってお願いに上りましたは」
歳にはませた口上ぶりで、
「ほかでもござりませぬ、五日の日の御岳山の大試合のことにつきまして……」
竜之助もいま帰って、その組状を見たばかりのところでした。そうして机の上に置かれた長い奉書の紙に眼を落すと、女は言葉を継いで、
「その儀につきまして、兄はことごとく心を痛め、食ものどへは通らず、夜も眠られぬ有様でござりまする故、妹として見るに忍びませぬ」
「大事の試合なれば、そのお心づかいも御尤もに存じ申す、我等とても油断なく」