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だいぼさつとうげ
大菩薩峠1
中里 介山
中里介山『大菩薩峠1』。同一底本的分册已合并为一书。收入:大菩薩峠、大菩薩峠、大菩薩峠、大菩薩峠。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,314 字 · 398 页
机竜之助の如きは、勤王家でもなし、佐幕党でもない、近藤、土方のような壮快な意気組みがあってでもない……大津を立って比叡颪が軽く面を撫でる時、竜之助は、旅の憂さをすっかり忘れて小気味よく、そして腰なる武蔵太郎がおのずから鞘走る心地がして、追分へかかろうとする時、ふいに後ろから呼び止める声がする。
「それへおいでの御仁、暫らく」
顧みれば、筋骨逞しい武士が一人、静々と歩んで来る。ほかに人もないから、呼び留めたのは自分のことであろう。
「お一人旅とお見受け申す」
黒の着物に小倉の袴で、高足駄を穿き、鉄扇を持った壮士。小刀の短いわりに、刀は四尺もあらんと思われる大きなのを横に差し、頭の頂辺から竜之助を見下ろして進んで来たので、
「いかにも一人旅」
竜之助も、それを睨み返すような気持で、例の無愛想な返事です。
「拙者も一人旅、御同行ねがいたい」
「いずれへおいであるな」
「京都まで」
「いかさま」
「柳緑花紅」の札の辻を、逢坂山をあとにして、きわめて人通りの乏しい追分の道を、これだけの挨拶で、両人は口を結んだまま、竜之助の方が一足先で、高屐の武士はややあとから、進み行くこと数町。