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だいぼさつとうげ

大菩薩峠10

中里 介山

中里介山『大菩薩峠10』。同一底本的分册已合并为一书。收入:大菩薩峠、大菩薩峠。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 285,635 字 · 558 页

青空文庫

そうすると一座の中から、突然に、

「御冗談でしょう」

とひやかし気味に、やり返すものがある。

「何ですって?」

山の通人も、気色ばむ。

「いつ、神主サンが、高山へ登って悪いという規則が出ましたか?」

「誰も、規則が出たとはいわないが、神主は高山へ登らないもので、高山で行をするのは修験のつとめだ」

「お前さん、博識ぶって、燈台下暗しのことを言いなさんな、神主が、高山に登らないなんてタワ言を言うと、お里が知れますぞ」

「ナニ?」

「論より証拠を、お聞きに入れましょう」

といって、山の通人と喧嘩を買って出たのは、池田良斎の一行、北原賢次であります。

一座のものは、傲慢無礼な山の通人の博識ぶりに、不愉快を感じていたところですから、この喧嘩相手の出たのを、むしろ痛快に感じてだまっていました。

山の通人は、自分の博識の権限を犯されでもしたように、ムッとして、

「論より証拠――証拠があらば聞きましょう、一体、神主は高山に登らないもので、高山修行は修験者に限ったものだ」

「ところで――物識りの先生、この信州松本に、藤江正明老人という神主様のあることを、御存じですか?」

「それが、どうしたのだ」