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だいぼさつとうげ
大菩薩峠11
中里 介山
中里介山『大菩薩峠11』。同一底本的分册已合并为一书。收入:大菩薩峠、大菩薩峠、大菩薩峠。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 368,567 字 · 720 页
必ずや二人ともに、腕に覚えあり余るつわものには相違あるまい――そうだとすれば、時にとってのよい見物、場合によっては、仲裁の役に廻り、あたら両虎を傷つけないようの老婆心もあってよかろう――ともかく、行って見よう。しかし距離が――あれだけの距離、目分量で、十町余りはたしかである。
これから、息をも切らさずに飛んで行っても、走せつけた時分には、もう両虎ともに傷ついて起つ能わざることになっているか、一方が一方を処分し終った時になっている――そこで、あえて急ぐ必要はあるとしても、急いだ効果はないものとして、件の小丘を、おもむろに下ろうとしていて、ふと首をめぐらした時、計らずも今度は、海上に於て異様なる黒一点を認めました。
それは、海岸の陸に於て、目下見つつあった二つの黒影とは、比較を絶するほどに大きな黒影が、波を切って南に向って行くのであります。
「黒船だ!」
白雲が眦を決してその黒船を睨んだ瞬間、ただいま決闘――と認定せる二つの人影のことは全く忘れ去りました。
「うむ、黒船だ」
こんな大きな海上を走る存在物を、多分、白雲は今までに見なかったであろう。檣を立て、煙を吐いて行く黒船の雄姿は、田山の眼と、心とを、両個の人影から奪うに充分でありました。