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だいぼさつとうげ
大菩薩峠16
中里 介山
中里介山『大菩薩峠16』。同一底本的分册已合并为一书。收入:大菩薩峠、大菩薩峠。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 268,946 字 · 520 页
とある薬草は、そのいずれの方面よりするも必ずや、この胆吹山によるところの薬草が大部、ほとんど全部を成しているであろうことは信ぜられるのですから、いやしくも医学に志あり、本草に趣味を有する人にとっては、この胆吹山は唯一無二の宝の山といってもよいのです。されば、職に忠実であり、学に熱心であるところの日頃心がけのよい道庵が、この山に突入することが当然で、突入しないことがむしろ外道であり、怠慢であるという理窟になるのですから、その点から考慮しても、道庵の胆吹入りは、脱線でもなければ無軌道でもなく、また墜落でもないことの証言は成り立つのです。
ただ、もう少し追究すると、そんならそれで、従者なり、案内人なりを連れて、白昼やって来ればよいのに、この真夜中に、こういう危険を冒してまで探究しなければならぬ必要と、薬草とがあるか? というようなことになるのですが、それは専門家としてのこの先生に減らず口を叩かせると、本来、薬草というものは、見物に来るべきものではない、臭いをかいでなるほどとさとるものもある、臭いをかぐには深夜に限る、なんぞと理窟をこねるかも知れない。また草木の真の植物的機能を知るために――草木といえども、動物と同様に休息もすれば、睡眠もとる機能がある、それを観察するために、わざと深夜を選んだという理由も成り立た