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だいぼさつとうげ

大菩薩峠7

中里 介山

中里介山『大菩薩峠7』。同一底本的分册已合并为一书。收入:大菩薩峠、大菩薩峠。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 242,044 字 · 477 页

青空文庫

金剛杖を取り直して、それを打ち倒して、首を地上へ打ち落すと、女の子は、

「そんなことをしたって駄目ですよ、あなたはこの燈火がなければ、一足も歩けないくせに――」

と言って、その蛍火ほどの線香を、竜之助の前にかざして見せましたが、やがて、竜之助には頓着なしに、先へ進んで、つぎからつぎへとその燈籠をつけて歩きます。燈籠という燈籠は、ことごとく髑髏にあらざれば人の首です。

竜之助は、うんざりしました。何里あるか知れないこの道を歩くには、いちいちあの首を見て歩かなければならないのか。

ふりかえって見ると、いつのまにか、後ろの方もおなじ髑髏の燈籠。

はて、ここはいったいどこだろう。昨日塩尻峠を越えたばっかりなのに――桔梗ヶ原か、五千石通りか……

それを考えた時は、うつつ心の出でた時で、まもなく鶏の声が耳に入るのを覚えました。塩尻の宿の、夜明けの肌寒いのを覚えると、傍にすやすやとおだやかなお雪の寝息。ああ、夢であったかと覚るのは常の人のことで、この男には、夢と現実との区別がありません。否、現実はことごとく暗黒の虚無で、夢みている間だけに、物の真実が現われてくるようです。