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てんさいはわすれたころくる

天災は忘れた頃来る

中谷 宇吉郎

「西日本新聞」1955(昭和30)年9月11日

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 1,064 字 · 3 页

青空文庫

という寅彦先生の言葉は、まさに千古の名言であると書いておいた。

ところが、この言葉が、その後方々で引用されるようになり、とうとう朝日新聞が、戦争中に、一日一訓というようなものを編集した時、九月一日の分に、この言葉が採用されることになった。

正月元旦の「日本国は神国なり」から始まって、三百六十五日分、毎日その日に何かいわれのある言葉を、集めたものである。そしてそれには、いろいろな人が、出所と解説とを書くことになっていた。私は九月一日「天災は忘れた頃来る」の解説を頼まれ、まず出所を明らかにと思って「天災と国防」を読み返してみたが、ない。慌てて天災に関係のありそうな随筆を、片っ端から探して見たが、どうしても見当たらない。

大いに困ったが、この言葉の方は、すでに慎重な会議をなんべんも開いて、採用に決定していたので、止めるわけには行かない。それで「天災と国防」の中にこれと全く同じことが書いてあるという理由で、解説を適当に書いて、勘弁してもらった。

もともとこの言葉は、書かれたものには残っていないが、寅彦の言葉にはちがいないのであるから、別に嘘をいったわけではない。