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てんま
天馬
金 史良
「文芸春秋」1940(昭和15)年6月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,407 字 · 70 页
朝鮮語は明らかに九州の方言や東北の方言の類とは違う。もちろん僕は又内地語で書くことを反対しているのでもない。少くとも言語のショービニストではないのだ。書ける人はわれらの生活や心や芸術を広く伝えるために大いに働いて貰わなければならない。そして内地語で書くことを慊らずとする者、又は実際に書けぬ者の芸術のためには、理解ある内地の文化人の支持と後援のもとに、どしどしいい翻訳機関でも拵えて紹介するように努めるがいい。内地語か然らずんば筆を折るべしという一派の言説の如きは余りにも言語道断である」そこで急に卓を叩いて立ち上った。
「それでだ! 玄竜、君はこの問題をどう考えるんだ?」
玄竜を睨み附ける目からは火が出るようだった。彼は瞬間すくみ上ったことである。その実玄竜は体よく愛国主義の美名のもとに隠れて、朝鮮語での述作はおろか言語そのものの存在さえも政治的な無言の反逆だと讒誣をして廻る者の一人なのだ。それでなくてもこういう純粋な文化的な述作行動も、朝鮮という特殊な事情から、その本来的な芸術精神さえがややもすれば政治的な色彩を帯びているものとして、当局の誤解を招き易いと云えば云える。