轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
てんま
天馬
金 史良
「文芸春秋」1940(昭和15)年6月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,407 字 · 70 页
とせき込みつつ小さく叫んだ。「芝居へ行こうと約束していたのをすっかり忘れていたんですの」
そしてはっと思う間に、
「明日の朝行くわ」
と耳元に囁いて再び飛んで出て行ったのである。
「待て、待て!」
と、後から急に狼狽したように叫びつつ彼は手を振りながら飛び出した。だがもう外は暗い夜で二人の影はどこへ行ったのやら、既に杳として消え失せていた。
三
「くそ忌々しい、畜生! 覚えとけ」
等と、小説家玄竜は肩をすくめたまま何度もぶつぶつ呟きつつ、朝鮮人街で一等賑やかな鐘路通りをさしていかにも浮れたような足取りで歩いて行った。あの女郎奴までこの俺を莫迦にしている、少々ふざけているぞと彼は自分に云った。何だか大事な手中の玉を奪われたような気がしてならなかった。するといつものように彼女の不調和にも長い胴の下に続くいびつに大きなお尻が目の前にちらついて見え、それに向って温かい血潮の擾乱がどくどくと流れる切ない快感を覚えるのだ。彼はひとりでに気がむせんで来てごくりと音を立てて固唾をのんだ。その時ふとどうしたことか、彼は自分の耳元に彼女の囁き声が聞えたように思われたので、はっと驚いて振り向いてみた。