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かのうせいのぶんがく
夫婦善哉
織田 作之助
織田作之助『夫婦善哉』。同一底本的分册已合并为一书。收入:可能性の文学、勧善懲悪。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 47,834 字 · 94 页
五代は丹造のきょときょとした、眼付きの野卑な顔を見て、途端に使わぬ肚をきめたが、八回無駄足を踏ませた挙句、五時間待たせた手前もあって、二言三言口を利いてやる気になり、
「――お前の志望はいったい何だ?」
と、きくと丹造はすかさず、
「――わしゃ金持ちになりたい」
と答えた。
「――そうか。それなら他所へ行くが良かろう。おれはいま百万円の借金がある。この借金は死ぬまで返せまい。そんなおれに、金持ちになる道が教えられると思うのか。うはははは……」
笑いやんで、五代は、
「――帰れ」
と、言った。
丹造はその後転々奉公先をかえたが、どこでも尻が温らず、二十歳の時には何とかの罪で罰金七円、二十一の時には罰金十円をくらった。
それで何となく大阪に住みにくく、丹造は東京へ走った。職を求めて東京市中を三日さまよう内に、僅かな所持金もなくなり、本郷台町のとある薄汚いしもたやの軒に、神道研究の看板が掛っているのを見て、神道研究とはどういうものかわからなかったが、兎も角も転がり込んだ時は、書生にしてくれと、頼む泣声も出なかったほど、あわれに飢え疲れていた。
広島訛に大阪弁のまじった言葉つきを嗤われながら、そこで三月、やがて自由党の壮士の群れに投じて、川上音次郎、伊藤痴遊等の演説行に加わり、各地を遍歴した……と、こう言うと、体裁は